年末調整の書類|3枚が何のためにあるのか

こんにちは、にゃんこです。会社で経理の仕事をしています。秋が深まってくると、社内に「年末調整の書類を配りました」というお知らせが回り始めます。
毎年書いているけれど、あれが何のための紙なのかはよく分からない。わたしも経理に配属される前はそうでした。名前を見ても長すぎて、読む気が起きなかったのです。
今回は令和8年分(2026年分)の年末調整で配られる書類を、1枚ずつ「何のための紙なのか」という角度から見ていきます。書き方のマニュアルではなく、そもそもの役割の話です。ここが分かると、記入欄の意味も見えやすくなります。
年末調整は「毎月の概算」を精算する手続き
そもそも年末調整は何をしているのでしょうか。国税庁は、1年間に源泉徴収した所得税および復興特別所得税の合計額と年調年税額とを比べて過不足を精算する手続き、と説明しています。年調年税額というのは、その年に本当に納めるべき税額のことです。
ここがいちばん大事なところです。毎月のお給料から引かれている所得税は、実は正確な金額ではありません。「だいたいこのくらいだろう」という概算で先に預かっているだけなのです。
なぜ概算になるかというと、その人の1年間の状況が年の途中では確定しないからです。生命保険にいくら払ったか、家族構成が変わったか、そうしたことは12月にならないと分かりません。だから12月に事実を集めて、正しい税額を計算し直します。
計算し直した結果、預かりすぎていれば返ってきます。足りなければ追加で引かれます。国税庁は前者を還付、後者を徴収と呼んでいます。12月の給与で「所得税」の欄がマイナスになっていたり、逆にいつもより多く引かれていたりするのは、この精算が乗っているからです。
そして、この精算のために必要な材料を会社に渡す紙が、これから見ていく申告書です。書類が出ていないと会社は正しい税額を計算できません。提出をお願いされるのは、意地悪ではなく単純にそういう仕組みだからです。
1枚目|給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
1枚目は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。ざっくり言うと、扶養している家族がいるかどうかを勤務先に伝えるための紙になります。
扶養控除というのは、養っている家族がいる人の税負担を軽くする仕組みのことです。この紙を出すことで、その控除などを受けるための申告をしたことになります。
この1枚だけは提出のタイミングが他と違います。国税庁の案内では、その年の最初に給与の支払を受ける日の前日までに提出することになっています。中途で入社した場合は、就職後に最初の給与を受ける日の前日までです。
つまり本来は年の初めに出す紙なのです。それでも年末に配られるのは、多くの会社が翌年分をこのタイミングでまとめて回収しているからです。秋に「令和9年分」と書かれた紙が混ざっていても、間違いではありません。
名前に「異動」と入っているのも理由があります。一度出した内容が変わったときは、変更内容を書いた申告書を改めて出すことになっています。期限はその異動の日の後、最初に給与の支払を受ける日の前日までです。結婚や出産といった出来事で状況が変わる前提の紙なのですね。
なお令和8年分からは、この申告書に「簡易対応様式」が追加されました。前年から記載内容に変わりがない場合などに使える簡易な様式として、国税庁が用意しています。会社によって配られる様式が違うことがあるので、手元の紙の見た目が同僚と違っても慌てなくて大丈夫です。
2枚目|名前がいちばん長い1枚は、4つの合体
2枚目の正式名称は、令和8年分では「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼給与所得者の特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書」です。長いですね。わたしも毎年ちょっと笑ってしまいます。
でも読み方は簡単で、「兼」で区切ると4つの申告書が1枚に合体しているだけです。分解すると次のようになります。
| 合体している申告書 | ざっくりした中身 |
|---|---|
| 基礎控除申告書 | ほぼすべての人に関係する基本の控除の申告 |
| 配偶者控除等申告書 | 配偶者がいる場合の控除の申告 |
| 特定親族特別控除申告書 | 対象となる親族がいる場合の控除の申告 |
| 所得金額調整控除申告書 | 一定の条件に当てはまる人の調整の申告 |
紙が4枚だったものを1枚にまとめた結果、名前だけが足し算されてこうなりました。経理の側から見ると、回収する紙が減るのはありがたい話です。
提出期限は、その年最後に給与等の支払を受ける日の前日までとされています。12月の給与計算に間に合わせる必要があるので、会社の締切はそれよりずっと早いのが普通です。社内の期限が11月中だったりするのは、計算と確認の時間を取っているからなんですね。
この紙には、自分の見込み年収を書く欄があります。まだ12月の給与が確定していない時期に書くので、見込みで構わない作りになっています。後で大きくずれたときに会社から確認が入るのは、そのためです。
3枚目|給与所得者の保険料控除申告書
3枚目は「給与所得者の保険料控除申告書」です。1年間に自分で払った保険料などを申告して、控除を受けるための紙になります。
国税庁の案内によると、この申告書で扱うのは次の控除です。
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 社会保険料控除(国民年金保険料等)
ここで押さえておきたいのは、「自分で払ったもの」が対象という点です。給与から天引きされている健康保険料や厚生年金保険料は、会社がすでに把握しています。だから改めて書く必要はありません。
一方で、学生時代の国民年金を自分で追納したようなケースは会社には分かりません。家族の国民年金を自分の口座から払った場合も同じです。この紙に書いて初めて反映されます。
秋に保険会社から届く「控除証明書」が必要になるのもこの紙です。届いたらすぐ捨てずに、年末調整の書類とまとめて置いておくと後が楽になります。経理としては、再発行の相談を受ける件数が毎年いちばん多いのがこの証明書です。
提出期限は2枚目と同じで、その年最後に給与等の支払を受ける日の前日までとされています。
出した紙はどこへ行くのか、そして年末調整で終わらないこと
3枚とも提出先は勤務先、正確には給与の支払者です。その後どうなるかというと、税務署長から特に提出を求められた場合を除いて支払者が保管することになっています。国税庁の案内にそう書かれています。全部が税務署に送られるわけではないのですね。
だからこそ、会社は何年も書類を保管しています。マイナンバーを書く欄があるものを厳重に扱っているのは、こうした事情によります。
最後に、年末調整では精算できないものにも触れておきます。国税庁は年末調整の対象とならない人として、その年の給与の収入金額が2,000万円を超える人や、災害減免法によって源泉所得税の徴収猶予や還付を受けた人を挙げています。
また、対象となる人でも、控除の種類によっては年末調整では扱えないものがあります。その場合は自分で確定申告をすることになります。副業をしている人や、ふるさと納税をたくさんの自治体にした人が確定申告の話に行き着くのは、こうした線引きがあるからです。
まとめ
年末調整は、毎月の概算で預かった所得税を12月に精算する手続きです。そのための材料を会社に渡す紙が、あの3枚になります。扶養控除等(異動)申告書と、長い名前の基礎控除申告書と、保険料控除申告書ですね。
1枚目は家族のこと、2枚目は自分の収入と控除のこと、3枚目は自分で払った保険料のこと。そう覚えておくと、記入欄を見たときの迷いが少し減ります。
ここに書いたのは令和8年分(2026年分)時点の様式と取扱いです。制度は年度で変わることがあるので、実際に書くときは手元の紙に印刷された年分と、国税庁の案内を確かめてくださいね。
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