源泉徴収票の見方|4つの金額が何を表すのか

こんにちは、にゃんこです。会社で経理の仕事をしています。
年末から年始にかけて、会社から小さな紙が1枚配られます。源泉徴収票です。わたしは経理の担当として毎年これを作る側にいますが、受け取る側から見ると数字が並んでいるだけの紙に見えると思います。どこを見ればいいのか分からないまま、引き出しにしまっている方も多いのではないでしょうか。
この紙は、確定申告のときだけでなく住宅ローンの審査や保育園の書類、転職先への提出でも求められます。中身が分かっていると、必要になったときに慌てずに済みます。この記事では上段に並ぶ4つの金額を順番にほどいていきます。金額や制度は令和8年分(2026年分)のものを使っています。制度は年度ごとに変わるので、お手元の票に書かれた年分を確かめながら読んでみてください。
源泉徴収票はいつ手元に来るのか
源泉徴収票は、会社が従業員に交付することが決められている書類です。国税庁の「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」では、年末調整をした分の交付期限が示されています。令和7年分については令和8年2月2日までとされていました。年が明けてしばらくすると手元に来る、という感覚で覚えておけば十分です。
年の途中で会社を辞めた場合は別の扱いになります。同じ手引では、退職の日以後1か月以内に交付するとされています。退職してしばらく経っても届かないときは、会社に問い合わせてみてください。紙ではなく電子データで受け取る形も認められています。
なくしてしまった場合は、勤務先に再発行をお願いするのが基本です。会社が何らかの理由で出してくれないときのために、税務署には「源泉徴収票不交付の届出」という手続きも用意されています。
まず見るのは上段の4つの金額
源泉徴収票には細かい欄がたくさんありますが、話の筋が通っているのは上段に横並びになった4つの金額です。この4つは左から右へ、引き算の順番で並んでいます。
| 欄の名前 | 何を表すか |
|---|---|
| 支払金額 | その年に支給が確定した給与や賞与の合計 |
| 給与所得控除後の金額(調整控除後) | 支払金額から給与所得控除を引いた金額 |
| 所得控除の額の合計額 | 基礎控除や社会保険料控除などを足した金額 |
| 源泉徴収税額 | その年の所得税として納めた金額 |
流れにすると、こうなります。支払金額から給与所得控除を引き、さらに所得控除の合計を引きます。残った金額に税率をかけたものが、いちばん右の源泉徴収税額です。4つの数字がばらばらに置かれているように見えて、実は1本の計算式の途中経過が並んでいるだけなのです。
「支払金額」は手取りではない
いちばん左の支払金額は、いわゆる年収にあたる欄です。国税庁の手引では「その年中に支給が確定した給与などの合計額」を書くとされています。ここで大事なのは、税金や社会保険料を引く前の金額だという点です。銀行に振り込まれた額を合計しても、この数字にはなりません。
「支給が確定した」という言い方も経理らしい表現です。実際に振り込まれた日ではなく、支給が決まった日で区切ります。12月分の給与が翌年1月払いという会社では、その分が翌年の票に入ることもあります。自分の会社がどちらなのかは、給与明細の支給日を見れば見当がつきます。
年の途中で転職した場合も気をつけたい欄です。前の勤務先の分を通算して年末調整をしてもらった場合、その金額も含めて書かれます。逆に通算していなければ、前の会社の票と今の会社の票が2枚になります。確定申告のときは2枚そろえる必要があります。
また、票を作る時点で未払いの給与があるときは、その金額を小さく内書きするという決まりもあります。見慣れない書き方が出てきたときは、会社の経理に聞いてみるのがいちばん早いです。
「給与所得控除後の金額」はどう出てくるのか
2つ目の欄は、給与所得控除を引いたあとの金額です。給与所得控除は、会社員にとっての経費のかわりに置かれているものです。自営業の人は売上から実際にかかった経費を引けますが、会社員は1件ずつ経費を集めるかわりに、収入の大きさに応じた金額を一律に引いてもらえます。
国税庁が示している令和8年分と令和9年分の計算は、次のとおりです。
| 給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 220万円まで | 74万円 |
| 220万円超〜360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
| 360万円超〜660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
| 660万円超〜850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
| 850万円超 | 195万円(上限) |
たとえば支払金額が400万円の人を考えてみます。400万円は360万円超660万円以下の段にあたるので、400万円×20%+44万円で124万円です。これを400万円から引いた276万円が、2つ目の欄に書かれる金額になります。
ひとつ注意書きがあります。収入が660万円未満の場合は、この表ではなく所得税法の別表で金額を求めるしくみになっています。そのため自分で計算した額と票の数字が数百円ずれることがあります。ずれていても間違いとは限りません。
この給与所得控除の最低保障額は、ここ数年で続けて引き上げられています。令和7年分では65万円でしたが、令和8年度の税制改正で74万円になりました。この改正は令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に使われます。欄の名前が「給与所得控除後の金額(調整控除後)」と長くなっているのは、所得金額調整控除という別の控除を引いたあとの金額を書くためです。令和7年分の票からこの書き方になりました。
「所得控除の額の合計額」に入らないものがある
3つ目の欄は、年末調整で差し引いた控除をすべて足した金額です。中身の代表は基礎控除と社会保険料控除です。ほかに生命保険料控除や扶養控除、配偶者控除なども入ります。
基礎控除は、合計所得金額に応じて金額が変わります。国税庁が示している令和8年分と令和9年分の金額は次のようになっています。
- 合計所得金額が489万円以下…104万円
- 489万円超〜655万円以下…67万円
- 655万円超〜2,350万円以下…62万円
社会保険料控除は、実際に給与から引かれた健康保険料や厚生年金保険料などの合計です。人によって金額が違うので、ここは自分の票の「社会保険料等の金額」の欄を見るのが確実です。
そして見落としやすいのが、この欄に入らない控除があるという点です。医療費控除と寄附金控除、雑損控除の3つは年末調整では扱えません。国税庁は、年末調整を受けた人がこれらの控除を受ける場合の確定申告書の記載例をわざわざ用意しています。つまり会社に任せきりでは差し引かれないということです。
医療費がかさんだ年や、ふるさと納税を確定申告で処理する年は、源泉徴収票を手元に置いて自分で申告することになります。源泉徴収票は、その申告書を書くための材料でもあるわけです。
まとめ:源泉徴収税額が最後の答え
いちばん右の源泉徴収税額は、年末調整を受けた人にとってはその年の所得税の最終的な金額です。毎月の給与からは概算で所得税が引かれていて、12月にその合計と本来の金額とを突き合わせます。引かれすぎていれば戻り、足りなければ追加で引かれます。これが年末調整という作業で、12月や1月の給与が少し増えたり減ったりする理由です。
源泉徴収票は、左から右へ引き算をしていく1本の流れでできています。支払金額から給与所得控除を引き、所得控除の合計を引いて、残りに税率をかける。この順番だけ覚えておけば、毎年もらう紙がただの数字の羅列ではなくなります。
今年の票が届いたら、まず支払金額と源泉徴収税額の2か所だけ見てみてください。去年と比べてどう動いたかが分かると、そこから先の興味が自然に湧いてくると思います。
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源泉徴収票は1年分のまとめですが、その材料になっているのは毎月の給与明細です。1か月ごとに何が引かれているのかは給与明細の見方|引かれているお金の中身を1つずつで順番に見ています。また、源泉徴収票の数字を決めている年末の手続きそのものについては年末調整の書類|3枚が何のためにあるのかで書きました。この記事で触れた寄附金控除の話は会社員のふるさと納税ガイド|限度額・ワンストップ特例まとめとつながるので、あわせて読むと流れがつかみやすいと思います。


